
橋を渡った先の通りは新しい住宅も多く、人影もちらほら。
2回ほど尋ねて、工房このはずくにたどり着いた。
そも工房このはずくと言うは、色彩磁器の作家藤本能道の
窯場のある住居とアトリエで、芸大の学長を退官した後移り
住んで制作活動をした場所だそうだ。
2月から4月の間、週数日、曜日だけ公開していたらしいが
この日はもう最終に近い日であった。
公開といっても、殆どの作品は人手に渡っていて、ここで
見られたのは仕事場そのものと、下絵のスケッチ等と若干の
作品である色彩磁器。
野鳥のリアルな描写が際立って、精細華麗な絵柄を磁器の
表面に見事に再現して、なるほどと思わせる。作品は無いが、
目録の写真集で十分理解できる。
工房を見るだけでは高い見学料と思ったら、敷地内の茶室
「有隣庵」に招じられ、抹茶のサービスを受けた。本格的な
茶室で、炭を起こして茶を立ててくれる。
夫人はお茶の事となると話が弾む。ひかえめ氏は不慣れだが、
多少の興味を満足させてくれるものであった。
帰り際に、塀の屋根の苔の緑と植栽の緑が一体となって春の
趣が濃厚に迫ってきて、思わずシャッターを切った。